XVDに乗り出す
さんざん公的資金をつぎ込んだあげくの果てに外資に買収される方が、はるかに問題である。
納税者が外国の金融機関に〃のし紙〃を付けてやることはない。
もちろん、いくら政府系金融機関が救っても、潰れる必要のない会社まで潰れてしまうことはあるだろう。
アメリカやイギリスでも数限りない犠牲が起こった。
しかし、運のいい人も悪い人も含めて、ビッグバンを通して概ね全体がいい方向にいくためには、銀行の貸し渋りは最も大切なプロセスだ。
正しい貸し渋りは必要だ。
貸し渋りで泣くならビッグバンなんて言うな、ということを再認識してほしい。
存続をすべて判断されて渋り対策で税金を使うなら、いっそのこと政府系金融機関に100兆円を置いて、銀行の査定に不満がある企業はそこから借りられるようにすべきだ。
その過程で銀行が潰れても、どのデフレ因は信用収縮だ。
日本経済のシステムは、今まさに正真正銘のデフレ日本経済を根底から規定しているのは、銀行による信用創造機能の縮小だ。
ビッグバンが進む中てこの流れは止められない。
デフレとは、経済が全体として縮小していくプロセスのことで、日本経済は92年度の下期からこの状況下にあると私は理解している。
家計も企業もみんなが「縮み指向」になり、その結果が所得と雇用に及び、さらにそれが再び家計と企業の経済行動を押し下げていくという構造である。
「きりもみ状態」とまではいかないが、デフレ・スパイラルの中に足を踏み入れたと言えるのではないだろうか。
卸売り物価を見ても、92年2,3月は前年同期比で1%程度下落している。
これには、消費税率のアップによる押し上げ効果が1.5%ほど含まれているから、それを外して考えれば、実勢では2.5%前後の下落ととらえるべきなのである。
そして4月は、2.7%もの下落。
エコノミストの中には、消費者物価がまだ下降状態に陥っている。
現象としてはそういうことであるが、今の日本経済の姿を根底から規定しているファクターは、実は信用デフレである。
すなわち、銀行信用の収縮というプロセスが90年からずっと続いていることが、最大の問題なのである。
この銀行信用の収縮は、具体的には信用乗数の低下という形で表われてくるわけだが、88〜90年の段階ではこの乗数はおよそ旧倍だったのに対し、最近では10倍にまで下がってきている。
これは、92年ごろの水準だから、そのころの経済レベルまで落ち込んでしまっているわけだ。
その要因は何か。
時系列的に見ると、92年から94年の夏までは、バブルが弾けたことによって、借りていないからデフレとは言えないという意見もあるようだが、消費者物価はデフレかどうかを見極める必要条件ではない。
企業にとって最大の意味を持つ卸売り物価が下がってきているということから、物価は下落基調に入ったと判断していいと考える。
デフレの根底にある「信用収縮」銀行では、すでに貸し付けていた融資の回収にも動いた。
貸出金を回収するということは、金融機関が自らの手で信用を縮めることを意味する。
それが今に至るまでずっと続いているのである。
このような状況下で、実物経済だけが元気よく成長していくということは、現在の我々の経済のしくみではありえない。
だから経済全体が収縮し、企業も家計も「縮み指向」に陥ってしまった。
この信用デフレ、そして90年年末までの財政デフレによって、非常に強いデフレのベクトルがかかって、経済全体が縮み、経済成長率もマイナス、企業も減収減益、一雇用状況も悪化というプロセスに入ってしまった。
単に不況が厳しくなって物価が下がっているというのではなく、その根底で銀行の信用創造機能の萎縮というファクターが経済を規定している。
それが現在の日本経済の姿なのである。
ビッグバンがいよいよ本番に突入し、この先銀行は貸出業務のさらなる圧縮を図るデフレの主因は信用収縮だ。
手と貸し手の双方において資産内容が悪化したことが挙げられる。
銀行の信用創造機能とは、貸出←預金増←貸出←預金増を繰り返すことによって実現されるわけだが、その貸出ができないということで、信用創造がそこでストップしてしまったのだ。
そして、90年の秋以降、超低金利がそれを一気に加速させた。
この間、定期預金の推移を見ても、ずっと減少を続けている。
これは、信用創造力のより大きい預金が減っているということだ。
日銀券は毎月8%ほど増えているが、日銀券つまり現金には信用創造の力はない。
預金が貸出に回り決済機能を拡大させるという信用創造のプロセスが逆流し、預けられていたおカネが引き出されて、現金(ダンス預金)になってしまっている。
信用創造機能を持たない現金が増えているわけだ。
さらに92年の夏以降は、金融機関がビッグバンを視野に入れた動きを見せ始めた。
とくに自己資本比率を一定以上に維持するために、その分母となるリスク資産を増やさない姿勢を明確にし始めたのだ。
それはすなわち、新規の貸出を行わないということであるし、それでもなお自己資本比率に不安の残るとしては自己資本を減らすということになる。
つまり、自己資本を4分の1にすれば、ROEは5倍になるからだ。
収益を増やすための合理化、リストラの努力もしていくだろうが、同時に分母を減らす、つまり自己資本を圧縮する努力も、これからの金融機関の非常に重要な戦略になっていく。
この自己資本は、自己資本比率を算出するときには分子になるから、その分子を減らすようなベクトルが働きつづける。
なおかつ、早期是正措置によって定められた8%、4%という自己資本比率をクリアしようとするならば、分母であるリスク資産をもっと圧縮しなければならない。
ということは、貸出はもう増やせないということである。
これまでは、銀行と言えば貸出業務が中心であったが、これからそれは可能な限り圧縮の方向にいくだろう。
94年3月期決算が終われば銀行の貸し渋りは収まるという見方もあったが、現実にそうはなっていない。
4月の統計を見ると、貸出残高は大幅に減少している。
新年度入りしてからのほうが、貸出金の回収がもっと激しくなっているということだ。
01年3月までにいろいろな体制が整備されていくことであろう。
しかし、その流れの中でも、基本的に銀行の信用創造機能の収縮傾向が止まることはないと考えざるを得ない。
なぜなら、銀行がこれまでのように貸出業務に大きく依存するということが許されない状況になってきたからだ。
それは、利さやの縮小といった環境変化と同時に、ROE(株主資本利益率)を高くしなければならないという課題を背負ったためである。
今の日本の金融機関のROEは、平均すると3%程度。
これに対して、欧米の主要金融機関はおよそ15%である。
これはすなわち、日本の金融機関の資本の効率が非常に悪いということを意味している。
そのような金融機関は、国際金融市場において投資家に評価されないし、資金調達の段階でハンディキャップを持つことになる。
21世紀に入ってグローバルなマーケットで競争していくことを考えると、日本の金融機関にとってROEを欧米並みに高めることは、喫緊のテーマなのである。
収益を10倍にすればROEも10倍になるわけだが、それは現実的には無理だ。
であれば、可能な手段となるのである。
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